
2018年4月23日発売の青林工藝舎『アックス』vol.122に近藤ようこ先生と齋藤なずな先生の対談が掲載されています。齋藤なずな先生の新刊「夕暮れへ」の刊行を記念して行われた対談です。「夕暮れへ」刊行時に近藤ようこ先生が帯を書かれています。
齋藤なずな先生は40歳でデビューしたという遅咲きの漫画家さんです。もともとイラストレーターだったそうで、画力が確かなのはそこからでしょう。でもイラストと漫画は違うので苦労されたお話もされています。この画力の確かさが現れているのが、一人一人登場人物の顔が全く違うところです。この点を「夕暮れへ」のあとがきで呉智英先生が指摘されていますが、実は理由があることが対談で明らかにされています。意外な理由です。
「セキレイインコ」を見て突然涙を流す、というシーンは実話だそうです。これって近藤ようこ先生の「かいつぶり」にちょっと共通していますよね。親の死に直面しているという心情的に共通しているシーンではありませんが、川の「鳥」にふと心を動かされるというところが、ちょっと。
「トラワレビト」は本当に怖いお話なのですが、お母さんの妄想が突拍子もないようで、つじつまがあっていて、こういうところリアルだなぁと思って読んでいたら、そこが実話なんだ!と驚くようなところがありました。これくらい吹っ切れた毒親話もあまりないですよね。
「ぼっち死の館」で絵が劇画調になっていて怖いですがその理由も。この話、ものすごくおもしろくて、やっぱりリアルだなぁと思いました。対談でもその辺が語られています。「ぼっち死の館」はシリーズ化され、
『ビッグコミックオリジナル』2018年1月増刊号に掲載されています。更に続きが夏に予定されています。

近藤先生は齋藤なずな先生(72歳)よりずっとお若いのですが、「トラワレビト」や「ぼっち死の館」の登場人物たちより少し若い、ちょうど自分たちの年齢の人が読むのではないかとおっしゃっていて、そうかもしれません。私はもう少し年下なので、まだあまりピンと来なくて、「トラワレビト」のお母さんでさえ、滑稽だと思ってしまえるほど距離感がある。でも、この先きっとこの本はまた読みたくなる、と思ったので、大切にもっていようと思いました。
青林工藝舎アックスストア アックスvol.122夕暮れへ