2016年05月25日

夏目漱石「夢十夜」の漫画化を岩波書店のサイトで開始

夢十夜2016年5月25日、夏目漱石「夢十夜」を近藤ようこ先生が漫画化します。岩波書店の公式サイトにて連載開始されました。

岩波書店「夢十夜」

これは夏目漱石没後100年を記念した企画です。「夢十夜」は 全10話で毎月25日頃に追加されていきます。また、「第一夜」から「第八夜」までウェブ連載され、「第九夜」「第十夜」を加え来春に単行本化されるとのことです。毎月楽しみです!

2016.05.25. 00:23 | 雑誌掲載情報

2016年05月14日

5月14日、日本マンガ塾のトークライブに登場されました。

近藤先生サイン中2016年5月14日、神田神保町の日本マンガ塾で近藤ようこ先生のトークイベントが開催されました。印象に残ったところだけ抜粋ですが、レポートを書きます。

企画及び司会進行の飯田耕一郎先生(漫画家、編集者、漫画評論家)と近藤先生はデビュー当時に活躍されていた場所が近いという旧知の間柄。『劇画アリス』ですね。近藤先生は『ガロ』でデビューした後、三流劇画誌ブームの中で『劇画アリス』の米沢嘉博編集長の下、自由に描かせてもらえた、と。後でお話しされていましたが、まだ20代前半だったので、無理に「エロ」を入れていた。若い女性の実体験のように思われるのも、あえて利用していたところもある。全部戦略です、と。

高校生の頃のお話しに遡ります。新潟の高校で高橋留美子先生と同じクラスになり、池上遼一先生が好きという点で意気投合、漫画研究会をつくって…というお話しは知られていると思いますが、今日その漫画研究会が「今でも続いている」と聞いてちょっと驚きました。創設者が高橋留美子先生と近藤ようこ先生だと、すごい宣伝していそう。年に1回文化祭のときに小冊子は出していたそうです。その小冊子、是非見たいです。きっとすごい貴重。

その後近藤先生は國學院大學に、高橋留美子先生は日本女子大へと進学されます。高橋先生の方は目白花子先生と大学で漫画研究会でご一緒だった(目白花子先生が会場にいらしてました)。大学在学中に「ものろおぐ」を描いて『ガロ』でデビュー。卒業後は紀伊國屋書店でアルバイトをしたものの体力がもたず、1年で辞めてしまった。

三流劇画誌や『マンガ奇想天外』の頃は12〜16ページくらいしかもらえなかったので、短編を書いていたけれど、本当はストーリーものを描きたかった。それでキャラクターを短編の中でつなげていき、単行本にするとわかる、というようなことをした。それをしなければ自分がもたなかった。

『サンデーまんが』で描き始めたきっかけは畑中純さんがまったく面識のない近藤先生を推薦したこと。それで畑中純さんの「まんだら屋の良太」を読んでみたら、とてもおもしろかった。たくさんの人物が登場して物語が広がって行く。これが『漫画サンデー』で「見晴らしが丘にて」を連作することにつながる。現代ものの描き方の幅が広がったのは、このときのことがある。畑中純さんは近藤先生にとって、恩人なんですね。

現代ものと中世もの、両方描いているけれど、中世そのものを描いても受け入れてもらいにくい。心情的なものは現代人の中にあるもので、今の読者がとっつきやすいものにしないとならない。でも現代人そのものの心情だと、中世を描く意味がない、そのバランスをいつも考えていた。中世ものは他の作家とネタがかぶらないところがいい。時代ものは考証が大変だけれど、自由なので現代ものより楽。ずっと現代ものを描いているとストレスがたまる。時代ものと現代ものは難しさの質が違う。時代ものは生首が転がっていたりとか、思い切ったことが出来るので、楽しい。

文学を漫画化することが増えたきっかけは、小学館の『SOOK』で連載した坂口安吾の「夜長姫と耳男」「桜の森の満開の下」。その後6年ほど構想に時間をかけて「戦争と一人の女」を上梓。安吾作品は完成度がそれほど高くなく、抽象的なことしか描いていない。だから漫画になる余地がある。「戦争と一人の女」はどうしても描きたかったが、雑誌連載は難しいと思ったので、描き下ろししなくてはならない。描き下ろしは先立つものがないと掛けないし、描き始めるまでに覚悟が必要だった。

「戦争と一人の女」「続・戦争と一人の女」はまったく違う小説だが、無理に合体させた。ノートにそれぞれの作品を時系列に書き出していくと、一致するところが出てくる。そこを軸にしてストーリーをつくっていった。“かまきり”という登場人物がいて、主人公二人だけだと話が進まないが、この“かまきり”がいることでうまく進んでいく。小説では成立しない穴を自分で産めることが出来る。「安吾はこう書く」というのはわからないが、「安吾ならこんなことは書かない」というのはわかる。

戦時下、実際に人々は何を考えていたのかが知りたかった。それでいろいろな人の日記を読んだ。普通の小学生の女の子から高見順、永井荷風なども参考にした。卵は闇値でいくら、などという話は高見順の日記を参考にした。東京の空襲写真はほとんどなくて、警視庁のカメラマンの写真集しか残っていない。ところが執筆中に広告会社のカメラマンが撮った写真集が出てきて嬉しかった、など資料収集の苦労についてお話しされました。

文学作品の漫画化の話は続きます。文章を読んだときに思い浮かぶ絵は人それぞれ違うけれど、自分にとってはこれだ、という絵を描いている。「夜長姫と耳男」の蛇がゆらゆらしているカット。これが描きたかった。
夜長姫と耳男
“オレが天井を見上げると、風の吹き渡る高楼だから、何十本もの蛇の死体が調子をそろえてゆるやかにゆれ、隙間からキレイな青空が見えた。閉めきったオレの小屋では、こんなことは見かけることができなかったが、ぶらさがった蛇の死体までがこんなに美しいということは、なんということだろうとオレは思った。こんなことは人間世界のことではないとオレは思った。”(「夜長姫と耳男」)


「死者の書」について。原作はわざと時系列をバラバラにしていて、わかりにくい。原作の初稿版は時系列になっていた。時系列通りに進めた方が読者がわかりやすいと思った。冒頭は闇の中、土の中ばかりの暗い絵なのでカラーは要らないと言ったのだけど、連載の冒頭なのでイメージ的な絵でいいからと編集部から言われ、カラー4ページを描いた。でも「した、した、した」の流れはどうしても冒頭から外せないので、その前に開放的な村の絵や郎女の拝む顔からスタートすることになった。結果的に良かったと思う。

折口の原作は時代的な背景、民俗学的な背景をわかっている人向けに書いているので、知らない人にはどうしてもわかりにくい。あとがきに書いたように、漫画を読んだあと、原作を読んで欲しい。自分は学者ではないので、解釈は入れない。例えば「おもかげ人」は金髪が肩まで垂れていて、阿弥陀仏のような造形とは違うけれど、漫画では原作通りに描いた。
死者の書 おもかげ人
“金色の鬢びん、金色の髪の豊かに垂れかかる片肌は、白々と袒ぬいで美しい肩。ふくよかなお顔は、鼻隆たかく、眉秀で夢見るようにまみを伏せて、右手は乳の辺に挙げ、脇の下に垂れた左手は、ふくよかな掌を見せて……ああ雲の上に朱の唇、匂いやかにほほ笑まれると見た……その俤おもかげ。”(「死者の書」)

「死者の書」については私しか漫画に出来ないという自負はある、とおっしゃってて、本当にその通りだなと思いました。

話の流れとして、どこで出た話か失念してしまいましたが、編集者との関係についてお話しされていました。ネームの直しについては編集者の言うことはほぼ全部受け入れて直す。具体的な修正点を伝えられない編集者はどうしたらいいかわからなくて、すごく困るけれど、ちゃんと言ってくれる編集者の言うことはほぼ受け入れて修正する。だから編集者によって作品の傾向が違うことがある、とキッパリおっしゃっていました。作品は漫画家と編集者のいわば共同作業なのだから当たり前かもしれませんが、ちょっと意外でした。それが近藤先生の作風が「閉じた」ものにならなかった、狭い枠の中で同じ路線をずっと行くようなものにならなかった理由だろうと飯田先生が解説してくれました。

近藤先生の次のお仕事は、5月末から岩波書店のサイトで夏目漱石の「夢十夜」の連載を開始するそうです。月刊だそうです。いずれ単行本にもなるでしょう。

サイントークイベント終了後はサイン会となりました。私は「死者の書」下巻にサインしていただきました。この時の売上金は熊本地震への義援金となるそうです。

近藤ようこさん、トークライブ(國學院大學取材日誌)
2016.05.14. 22:56 | イベントレポート

2016年03月13日

日本マンガ塾で近藤ようこ先生のトークイベントが開催

飯田うさ爺のトークライブ 第7回 近藤ようこ先生2016年5月14日、近藤ようこ先生のトークイベントが開催されます。場所は神保町にある日本マンガ塾というマンガの専門学校です。「飯田うさ爺のトークライブ」は、この学校の講師を務められる漫画家・漫画評論家の飯田耕一郎先生が主催しているトーク・イベントのシリーズ。近藤先生は第7回目のゲストになります。

『コミックビーム』2016年4月号で遂に完結した「死者の書」をはじめ、マンガと文学の”はざま”をその魅力的な画風で話題作を生み出している近藤ようこ先生の作品について、飯田先生が近藤先生からお話しを聞き出して下さるそうです。


日時:2016年5月14日(土)14:00〜15:30
場所:日本マンガ塾(東京都千代田区神田神保町2-40-5東久ビル3F
入場料:無料
申し込みフォーム:飯田うさ爺のトークライブ 第7回 近藤ようこ先生
2016.03.13. 15:39 | イベント

2016年03月06日

『アックス』109号に近藤ようこ先生と池上遼一先生の対談が掲載

アックス 109青林工藝舎の隔月刊誌『アックス』109号が「水木しげる特集」で、巻頭の対談が「池上遼一×近藤ようこ」という魅力的な企画でした。近藤ようこ先生が高橋留美子先生と同じ高校ですが、お二人出会ったきっかけが「池上遼一」というキーワードをどちらかが聞きつけたことだったというお話しは以前から聞いていたので、これは、という組み合わせでした。そのとき話題になった池上先生の作品が「スパイダーマン」であったことを、この対談で初めて知りました。

池上遼一先生は水木しげる先生のアシスタントをしていた経験があります。劇画漫画の池上遼一先生が『ガロ』に投稿した作品を見て、水木しげる先生が長井勝一編集長に頼んでアシスタントとして呼び寄せたとのこと。それで池上先生は上京したという話は有名です。ところが、アシスタントに行った先につげ義春先生がいて…という縁で、池上先生がつげファンだったせいか、水木しげる特集なのに、つげ義春絶賛なお話にながれていきます。そして、つげ義春先生は「漫画に文学を持ち込む」という流れをつくったという話になります。近藤先生はその系譜にいらっしゃるんだなと思います。「漫画に日本文学を」の流れですね。

その直後に「白土三平インタビュー」とか載ってたりして、他の記事も興味深く、全体としておもしろい特集になっています。
「アックス」109(青林工藝舎)
2016.03.06. 13:26 | 雑誌掲載情報

2015年12月25日

「月影の御母」「美しの首」の新装版が2冊同時刊行

美しの首 新装版月影の御母

2015年12月25日、近藤ようこ先生の「美しの首」「月影の御母」の新装版が2冊同時に刊行されました。装丁は新たに描き下ろしたイラストです。「美しの首」の方は「玉鬘」のカラー3ページが再現され、「月影の御母」の方は第1回「水底の夢」と第2回「海石榴市」のカラー扉が再現されています。こういうの、嬉しいんですよね…。

「美しの首」  「月影の御母」

近藤ようこ「美しの首」「月影の御母」2冊の新装版が同時発売(コミックナタリー)
2015.12.25. 23:15 | 単行本発売情報