2016年09月26日

ミュージアムトーク「國學院の学び、『死者の書』」レポート

2016年9月24日(土)、國學院大學博物館で開催されている「折口信夫と『死者の書』―生誕130年記念 特集展示」を観てきました。また、ミュージアムトーク「國學院の学び、『死者の書』」を聴いてきました。

近藤先生の「死者の書」の原画ですが、9月3日〜22日を前期、9月23日〜10月10日を後期として2回に分けて各20枚ずつ展示されます。23日からは後期なので、下巻から20枚です。

  • p8〜11の4ページ
  • p30〜31の2ページ
  • p71〜73の3ページ
  • p144の1ページ
  • p177〜179の3ページ
  • p180〜181の2ページ
  • p190〜194の5ページ


12時30分から博物館のホールではミュージアムトークが始まりました。今回は民俗学者で同大文学部教授の小川直之氏との対談形式になります。前回と異なり、この日はシックな洋装でした。お着物も素敵ですが、近藤先生は洋服姿も素敵です。

最初に歌人・釈迢空としても知られる折口信夫の肉声が残っていて、それを聞かせてもらいました。それから対談に入りました。


小川先生:近藤さんはどんな学生生活を送っていたのですか?

近藤先生:今はとてもきれいな校舎になりましたが、自分がいたころはもっと古くて狭い校舎でした。

高校生のとき、折口民俗学に興味があったので入学を考えたのですが、世間では右翼のイメージがあったので、怖かった。それで高校三年生の夏休みに見学にきました。当時の大学はどこでもそうでしたが、学生運動の立て看板がありました。右翼の学校かと思っていたら左翼もいる、バランスのとれた自由な大学なのかなと思い、安心しました。

今思うと良い大学だったと思います。卒業してしまうと、もっと勉強出来たのでは?と思ってしまいます。渋谷からすぐという街中にあるのに、静かでのんびりとした環境でした。

高校生のときに勉強したいけれど、どのジャンルかわかりませんでした。古代史なのかな?と思ったりもしました。
歴史学者の上田正昭先生の「日本神話」を読んで、民俗学というものがあることを知りました。そこでは「柳田学は幸福の民俗学、折口学は不幸の民俗学である」という趣旨の言葉を読みました。折口学は柳田学が拾わなかった「死」や「わかれ」「性」といったものを扱っているという意味ですが、それなら私は折口学だと思いました。ちょうど「死者の書」が中公文庫から出たところでしたので、早速買って読んでみて「自分がやりたかったのは、これだ」と思ったのです。



小川先生:大学で勉強したことは、今でも役に立ってますか?

近藤先生:漫画家の仕事の役に立っています。大学で勉強する過程で知った「小栗判官」を漫画化したりしました。

小川先生:デビューは大学時代ですよね。

近藤先生:大学生時代も漫研(漫画研究会)に入っていて、デビューが大学4年生でした。卒業ぎりぎりの単位しかとらず、4年生の時は授業は週に3時間だけで、あとは卒論を書くだけでした。ですから、ずっと図書館にいて、古い論文を探すのがとても楽しかったのです。

卒業後、漫画を書くときに調べ物をすることがたくさんあります。そのときに調べ物のやり方などで、大学時代に学んだことは役に立ちました。

また、4年生の時に徳江(元正)先生の「中世文学演習」をとりまして、この授業で学んだ「絵解き」の勉強は半分趣味で、半分仕事で続いています。



小川先生:「死者の書」を読んで印象に残ったところを三つあげてください。

近藤先生:全て好きなので、三つというのは難しいですが…。

1. 初めて「死者の書」を読んだとき、私の知っている言葉がたくさん出てくると思いました。これまでは古事記などでしかこういう言葉を使うものは読んだことがなかったので。

2. 話がぼんやりとしかわからない、でも何故かおもしろい、と思いました。

3. 大伴家持がおもしろい人物だと思いました。

〔すみません、ここからメモが判読できなくなっています。話がかなり抜けています〕



最初は「死者の書」を「しょ」ではなく「ふみ」と読んでいました。たぶん大学でそう習ったからだと思います。

「死者の書」は俤びとのイメージがおもしろいのですが、ほかに、郎女が夢の中で珊瑚になったシーンがおもしろいです。これは折口が海を出したかったのではないかと思います。
「ずんずんと、さがって行く。水底みなぞこに水漬みづく白玉なる郎女の身は、やがて又、一幹ひともとの白い珊瑚さんごの樹である。脚を根、手を枝とした水底の木。頭に生い靡なびくのは、玉藻であった。玉藻が、深海のうねりのままに、揺れて居る。やがて、水底にさし入る月の光り――。ほっと息をついた。」




小川先生:「死者の書」の次に取り上げて漫画化したい作品はなんですか?

近藤先生:それはありません。「しんとくまる」(「身毒丸」という漢字が一番好きです)もすでに出していますし。折口信夫は詩集を3冊(「古代感愛集」「近代悲傷集」「現代襤褸集」)を出しているので、その詩に挿絵をつけるというのをやってみたいのですが、そんな仕事は多分来ないと思います。



最後に折口信夫が描いたスケッチが公開されました。落書きやフィールドワーク中のスケッチまで、さまざまなイラストがありましたが、まさに「ポンチ絵」と呼べるような、ユーモアあふれる絵もありました。

すみません。相当飛んでいますので中身の薄いレポートになっていますが、本当はもっと中身の濃いイベントでした。

集展示生誕130年記念 「折口信夫と『死者の書』」ミュージアムトークIII
2016.09.26. 23:27 | イベントレポート

2016年09月22日

文化庁メディア芸術祭新潟展のイベントに近藤ようこ先生が登壇

2016年10月10日(月・祝)から30日(日)文化庁メディア芸術祭 新潟展「記憶と記録のモノ潟り」が開催されます。こちらに近藤ようこ先生の「五色の舟」の原画展示があるようです。原画の点数や具体的な場所がわかりましたら更新します。
文化庁メディア芸術祭 新潟展チラシ(PDF)

また、10/29(土)にはイベントに登壇されます。文筆家の千野帽子さんとの対談です。

テーマ「マンガと文学―ふたつの想像力」
日時:10月29日(土)14:00〜15:00 
会場:旧市長公舎 安吾 風の館(新潟県新潟市中央区古町通6番町971-7)
出演:近藤ようこ(マンガ家)、千野帽子(文筆家)
進行:石田美紀(新潟大学人文学部准教授)
定員:28名様(当日先着)
入場料:無料
公式サイト > イベント

【追記:2016年10月9日】会場の様子が公式サイトにアップされました。
公式サイト お知らせ10月7日
2016.09.22. 00:39 | イベント

2016年09月12日

ミュージアムトーク「『死者の書』を漫画化するということ」レポート

國學院博物館2016年9月10日(土)、國學院大學博物館で開催されている「折口信夫と『死者の書』―生誕130年記念 特集展示」を観てきました。また、ミュージアムトーク「『死者の書』を漫画化するということ」を聴いてきました。大勢の方が集まっていました。

近藤先生の「死者の書」の原画ですが、9月3日〜22日を前期、9月23日〜10月10日を後期として2回に分けて各20枚ずつ展示されます。今回は上巻から20枚。展示には書籍のページと原作の該当ページが添えられています。

展示原画:冒頭のカラー4ページ分/第1話扉からp12までの6枚/p36〜37/p40〜41/p68〜69/p84〜85/p156〜157

ミュージアムトーク14時から博物館のホールではミュージアムトークが始まりました。数々のイベントで登壇されてきた近藤先生ですが、必ず聞き手がいらっしゃって、対談形式をとっておられました。今回おそらく初めて「一人での講演会」とのことで、30分と短い予定でしたが、予定をオーバーして45分くらいの時間となりました。

近藤先生と「死者の書」の出会い、漫画化する目的、そして漫画化にあたって心がけたことなどについてお話されました。展示されている原画をもとにお話を進められています。

メモから起こしていますので、抜けた部分は多くあります。また間違いもあると思いますので、こちらのフォームよりご指摘ください


「死者の書」と出会ったのは、この中公文庫の本で、ここに「75.6」とメモがあるので、1975年の6月に購入したと思われる。高校3年生でどこの大学に進学するか考えていた頃、自分のやりたいことが、どのジャンルになるのかわからなかった。民俗学というものがあり、それも柳田学ではなくて折口学というものであるあることがわかった。ちょうどその頃に出会ったのだと思う。それ以来41年経って漫画化することになった。

自分自身がおもしろいと思って漫画化したのだが、最終的には皆さんに原作を読んで欲しいと思って漫画化した。
インターネットで検索すると、案外「死者の書」を読んだことがある人は大勢いるのだが、「何が書いてあるか、わからなかった」「途中で諦めた」という人が多い。それは残念なので、入門書というか手引きのようなものなら、自分のも出来るのではないかと思った。昨年から今年始めにかけて『コミックビーム』誌で連載した。

「死者の書」の何が難しくて読みにくいのかと考えた際に、一つは時系列がバラバラなこと。二つ目に読者に折口学の基本や歴史の知識があることを前提に書かれてあるため人間関係などがわかりにくいことがあげられるのではないか。そのあたりを整理してわかりやすくしたが、自分の解釈は入れていない。「死者の書」については人形アニメーションは見たが、なるべく研究書など他の情報は目に入れないようにした。テキストを折口の原作のみとした。

今読める「死者の書」は初稿から構成を入れ替えてあるもの。そこでオープニングは「彼の人の眠りは、徐かに覚めて行った。」とある通り、滋賀津彦が蘇るシーンから始まる。初稿は郎女が家出をしてお寺の門に入るところから始まる。初稿は時系列の通りでわかりやすいので、その通りに描こうと思ったのだけれど、冒頭に死者の目覚めも欠かせない。そこで折衷案として郎女が山を歩いて行くところと死者の目覚めを同時に描いた。

(以後はスライドに原画が写ります)

1) 「死者の書」上巻カラー4ページ(図は冒頭の1ページ)
「死者の書」上巻カラー連載を開始するにあたり、カラーを入れるように言われたのだが、冒頭は闇で真っ暗だから、カラーは要らないと言ったのだが、イメージがでいいからと言われ、4ページ描いた。今は描いてよかったと思う。


2) 「死者の書」上巻 p7〜12(図はp10)
「死者の書」上巻 p10「したしたした」という音は滋賀津彦のお墓の中で水が垂れる音だが、これを郎女の足音と連動させて描いている。


3) 「死者の書」上巻 p36〜37 蓮の糸について(図はp37)
「死者の書」上巻 p37蓮の糸の作り方は調べると2種類出てくる。ミャンマーでやっている方法、茎を二つに折って細い繊維を切れないように引き出していく方法を描いた。


4) 「死者の書」上巻 p40〜41(図はp41)
「死者の書」上巻 p41郎女のキャラクター設定を説明するのが一番難しかった。藤原氏の中でも〔郎女は藤原四家のうちの南家族長・豊成の第一嬢子である〕一番神に近い「斎き姫」にふさわしい人として説明した場面。藤原氏は水の信仰を司る一族であり、郎女はいわゆる「水の女」である。

郎女は乳母や語り部から自分たちの一族の物語・歴史を語られて育っている。水の女の物語と言えば、神の禊ぎを手伝うたなばた姫の物語がある。郎女はその末裔であるというイメージをここで描いている。

郎女は古い物語を聞かされて育ち、新しい知識を学び〔才を習う〕、新しい物語を求めて出て行くのだが、最後は神に仕える女として、どこかに行ったのではないかと思う。


5) 「死者の書」上巻 p68〜69 大伴家持と坂上郎女が語り合う(図はp69)
「死者の書」上巻 p69大伴家持が登場する。現世的な男性・藤原仲麻呂と異なり、大伴家持は時代遅れで政治力がなく、歌を詠むのが好きな人物。家持の人物を表現するために坂上郎女を登場させた。坂上郎女というのは家持の叔母で、一族の斎き姫である。この女性は原作には出てこない。


ちょうどこれを描いていた頃、ラグビー日本代表が勝っていて、家持が五郎丸選手に似ていると言う話題が出ていた。(会場爆笑。似てる〜!!)




6) 「死者の書」上巻 p84〜85(図はp85)
「死者の書」上巻 p85郎女が住んでいるのは平城京の館で、二上山は見えるが、方向としては、ふたこぶあるようには見えないはずだが、このように描いた。

仄暗ほのぐらい蕋しべの処に、むらむらと雲のように、動くものがある。黄金の蕋をふりわける。其は黄金の髪である。髪の中から匂い出た荘厳な顔。閉じた目が、憂いを持って、見おろして居る。ああ肩・胸・顕あらわな肌。――冷え冷えとした白い肌。おお おいとおしい。


郎女が幻を見るシーン。白い肌、黄金の髪の毛を肩にたらしている。いわゆる仏様の姿とは違うが、そのまま描いた。ガンダーラ仏のイメージが良いかと思って描いた。


7) 「死者の書」上巻 p112
「死者の書」上巻 p112滋賀津彦が処刑されるシーン。「鴨のように首をねじちぎられた」とある。絞首刑だが、今のつり下げるタイプではなさそう。両側から引っ張るように描いた。


8) 「死者の書」下巻 p8
「死者の書」下巻 p8「死者の書」は難しい。郎女によって滋賀津彦の怨念が山の上に表れた俤(おもかげ)人と合体してさまようのだと言われたが、よくわからない。よくわからないが、原作通りに絵を描いていると、はっきりするところもある。

滋賀津彦の霊が郎女を耳面刀自と思って夜訪れる足音がする。最初は怖がっていたが、次第にその訪れを待るようになる。それが少しずつ訪れなくなっていくと、さみしく思うようになる。すると、郎女は幻を見る。滋賀津彦の霊と俤人が近づいて一体化したように思えた。不思議な体験だった。


9) 「死者の書」下巻 p185
「死者の書」下巻 p185一カ所だけ自分の創作を入れた。原作には出てこない家持を再び登場させて、死んでしまった藤原仲麻呂の思い出を語らせている。




質問
高校生のときに読んで、今のタイミングで漫画化されたのは何故か?

答え
きっかけは描かせてくれる雑誌があったこと。30数年漫画を描いてきて、あとこれからどのくらい描けるかわからない。体力的に大変な仕事。今じゃないと出来ないと思った。


質問
当麻寺では中将姫伝説はメジャーで、大津皇子はそうでもないのに、何故折口信夫はこれを一緒にさせた物語を書いたのだと思うか?

答え
それはわからないが、中将姫伝説の姫と「死者の書」の郎女は違うように思う。もっと近代的なキャラクターで、もっと強い、自分の意思をもった女性に見える。



サイン中ミュージアムトーク後、サイン会が開かれました。私は下巻には以前サインをいただいたので、今回は上巻をもっていきました。

近藤先生は秋の装いか、トンボの柄のお着物をお召しでした。いつもながら素敵でした。9月ですので残暑が残っていましたが、それほど強烈に暑くない、晴れたいい日でした。


ミュージアムトーク、近藤ようこ「『死者の書』を漫画化するということ」(國學院大學取材日誌)
2016.09.12. 11:50 | イベントレポート

2016年07月31日

國學院大學で「折口信夫と『死者の書』」が開催

生誕130年記念 特集展示 折口信夫と『死者の書』2016年9月〜10月、國學院大學が折口信夫生誕130周年を記念し、「死者の書」の展示とイベントを開催します。近藤ようこ先生の原画も展示されます。また、さまざまなイベントがあるのですが、その中に2本、近藤ようこ先生が登壇されます。最初の方はサイン会もあるので、ファンには嬉しいですね。

まず、漫画「死者の書」から原画20点展示されます。9月3日〜22日に上巻、9月23日〜10月10日に下巻収録分それぞれ20点ずつ40点となります。
さらに、30分の講演とサイン会、そして小川直之教授との対談と3本立てです。ほかにアニメーション映画上映、講演会、折口信夫「死者の書」初出誌自装本の複製本販売など盛りだくさんです。

(1)「死者の書」原画20点展示(前後期入替計40点)

折口信夫と『死者の書』―生誕130年記念 特集展示
会期:平成28年9月3日(土)〜10月10日(月・祝)
時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
会場:國學院大學博物館校史展示室・ホール
入場料:無料
※前・後期で入れ替え。合計40点。


(2) 近藤よう先生の登壇イベントその1. 講演会

「『死者の書』を漫画化するということ」
日時:9月10日(土)14;00〜14:30
会場:國學院大學博物館ホール
申込;不要
※講演会の後、サイン会。書籍は当日販売されています→詳細はこちら


(3) 近藤よう先生の登壇イベントその2. 対談

「國學院の学び、『死者の書』」
日時:9月24日(土)12:30〜13:30  
講師:近藤ようこ(漫画家)× 小川直之(國學院大學文学部教授)
申込;不要

詳細はこちら→生誕130年記念 特集展示 折口信夫と『死者の書』

國學院大學博物館へのアクセスはこちら→MAP

近藤ようこの原画展示「折口信夫と『死者の書』」トークショーやサイン会も(コミックナタリー)
2016.07.31. 09:36 | 雑誌掲載情報

2016年05月25日

夏目漱石「夢十夜」の漫画化を岩波書店のサイトで開始

夢十夜2016年5月25日、夏目漱石「夢十夜」を近藤ようこ先生が漫画化します。岩波書店の公式サイトにて連載開始されました。

岩波書店「夢十夜」

これは夏目漱石没後100年を記念した企画です。「夢十夜」は 全10話で毎月25日頃に追加されていきます。また、「第一夜」から「第八夜」までウェブ連載され、「第九夜」「第十夜」を加え来春に単行本化されるとのことです。毎月楽しみです!

2016.05.25. 00:23 | 雑誌掲載情報