2024年10月06日

近藤ようこ先生の個展「兎と鰐」を拝見しにビリケンギャラリーに行ってきました


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2024年10月5日(土)、小雨降る中、青山のビリケンギャラリーに行ってきました。2年ぶりに開催された近藤ようこ先生の個展を拝見しましたのでレポートです。写真はご承諾をいただいていますが、タイトルや画材など、会場で急いでメモったのでミスがあるかと思います。ご指摘あればすぐに修正します。

今回のテーマは「兎(うさぎ)と鰐(わに)」です。先生が「鰐は兎に騙された鰐鮫のことです」と個展の紹介に書かれています。

「兎」は「古事記」の「因幡の白兎」のウサギです。一方「鰐」は、は虫類の「ワニ」ではなく「サメ(鮫)」のことです。古事記にアフリカのワニが出てくるわけはないので。「サメ」と呼ぶのは関東以北の地方が多くて関西では「フカ」、山陰地方、特に出雲地方では「ワニ」と呼ぶそうです。

兎と鮫がたくさんいます。また、たこや水中に住む妖怪や半魚人、イカかな?タコかな?の触手がたくさんありました。先生は触手を描いていると楽しくなってしまうそうです。

今回はマンガ原画はなく全部描きおろしの新作のカラー絵です。水彩、アクリル、鉛筆など。絵はB4やA3といった大きいものが10点、2枚組セットの中くらいのが2点、A5くらいの小さいものが11点の点数としては23点、絵としては25枚でした。

●大きな作品と2枚組セット


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右から

大1:「海坂(うなさか)」〔水彩・B3〕

リュウグウノツカイと女性。この女性は豊玉姫ですね。

豊玉姫と山幸彦のお話ですが、ざっくり言うと、お兄さんの海幸彦から借りた釣り針を落とした山幸彦が竜宮に降りて豊玉姫と出会い結婚。しばらくは幸せに暮らしていましたが、釣り針を探しに来たんだっけ?と豊玉姫の父の豊玉彦の力を借りて釣り針を見つけて地上に戻る。それを追って豊玉姫も地上に来る。でも子供を身ごもっていたので、中を覗かないようにと行って産屋にこもる。でも覗かないでと言われたら覗くのが世の常ですね。

山幸彦に本来の姿(鮫)を見られてしまった豊玉姫がそのことを恥ずかしく思い、海と陸を行き来して子育てすることを諦め、子供を陸に残すことにした。その際、海坂(うなさか・海と陸の境)を行き来できないようにふさいだ、というお話に基づいて、“ふさがれてしまった行き来できるところ”の表現だそうです。私には海の中にある海と陸の通り道のように見えました。

大2:「おこじょのロープ」

オコジョと女性。モフモフです。〔アクリル・墨・B3〕

アーミン(オコジョ)の毛皮は貴重で、ヨーロッパの王侯貴族が身につけたもの。
→こちらが参考になりました。「王族のマントの毛皮の正体は何?白地に黒の点?意外な正体とは?超解説!」

あの点々はオコジョの尻尾なのか。近藤先生は尻尾だけてなく本体もたくさんいる絵を描かれました。かわいい。でも一着につき1000匹使うとか。今はもう動物愛護の観点からなかなか考えられませんけれども、かつてはそういうものがあったということなんですね。


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右から

大3:「鮫人」〔水彩・アクリル・墨・B3〕
この前開かれたビリケンギャラリーの合同展で出されたのが鮫で、お気に召したそうです。額縁ですが、私には掛け軸の絵のように見えました。

大4:「うさぎ天」〔水彩・アクリル・パステル・A3〕
下が兎。上も兎ですが真ん中の顔だけ人間です。

中1:〔おこじょと赤いコートの女性〕
「おこじょのロープ」と同じモチーフ。つぶらな瞳のオコジョがいます。かわいい‥

中2:〔お魚と女性〕もう片方に植物(葉っぱ)があります。


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右から

大5:「二人」〔水彩・パステル・A3〕
ブルーの兎のかぶりものを頭にかぶった女性と頭以外を着ている人の組み合わせ。頭だけの女性が下着なのがエロいけれどかわいい。    

大6:「水怪」〔水彩・アクリル・A3〕
水の妖怪と書いて「水怪」。水に棲む妖怪なんでしょうけれど、両方とも女性ですね。水色の紙と首/腕の輪が目を引きました。

大7:「灯台」〔水彩・パステル・A3〕
灯台と魚人?やはり女性です。美しいですね。

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大8:うさぎ浴〔水彩・B4〕
今回の個展のメインとなった絵。
もふもふと気持ちよさそうに女の子が寝ています。もう一人の女の子はまだ目が覚めている‥けど靴下と靴が落ちてますね。でも兎の目が悪い目をしている‥

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向かいの壁なので 左からになります。

大9:うさぎ浴2 〔鉛筆・水彩・B4〕
前の「うさぎ浴」の続き

大10:豹妓〔水彩・アクリル・パステル A3〕
ヒョウ柄なのに触手の女性二人です。触手がお好きなことがよく伝わってきます‥

●小作品シリーズ
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兎、鮫、タコ/イカ、鳥、チンアナゴ‥の女性。触手柄のお着物やバニーガール、兎を抱いた女の子‥
描かれているのは女性と動物と想像上の動物ですね。

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近藤先生もお元気そうで、よかったです。

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雨がふっていたので、外には濡れた兎がいました‥。ちょっと寂しげ。

近藤ようこ個展「兎と鰐」
会期:2024年10月5日〜10月20日 12:00〜19:00(月火休み ※10月14日(月)祝日営業)
会場:ビリケンギャラリー(東京都港区南青山5-17-6-101)
2024.10.06. 12:19 | イベントレポート

2024年04月05日

日本近代文学館「2023年の声のライブラリー」近藤ようこ×酉島伝法


2024年3月30日より配信が開始された、日本近代文学館「2023年の声のライブラリー」に近藤ようこ先生と酉島伝法先生の対談が収録されています。有料1,200円で1週間の視聴期限となっています。vimeoの公式アプリの「オフラインリスト」に追加してダウンロードしても、期限内だけの視聴です。

2023年の声のライブラリー 動画配信開始

日本近代文学館「2023年の声のライブラリー」

「声のライブラリー」は日本近代文学館が1995年から開催している文学者の自作朗読会・対談のイベントです。年4回開かれていましたが、コロナ禍になり、2020年より無観客で行ったものを配信するようになりました。4名の文学者が今一番会いたい文学者をそれぞれ招き、自作朗読と対談を行った記録映像集になっています。

これに近藤ようこ先生が指名されましたが、近藤先生が「わたしは文学者ではないので」と戸惑われたのはよくわかります。それで、小説家で絵も描かかれる酉島伝法先生をお招きになられた。酉島先生は小説家ですが、もともとデザイナー/イラストレーターなので、絵の方こそ先にプロだった方です。日本SF大賞を2度受賞された気鋭のSF作家です。

今回のものは2023年10月31日・11月1日、無観客にて日本近代文学館講堂にて収録されたものだそうです。全体で1時間48分となっています。「各回、それぞれの講師による30分程度の朗読の後、約1時間の対談」とありましたが、近藤先生は作品が漫画なので「夢十夜」の後書きを読まれました。なので朗読が20分くらいでしょうか。残り1時間30分丸々対談です。

○話題に出た作品
近藤先生の作品「夢十夜」「高丘親王航海記」「五色の舟」「ルームメイツ」「戦争と一人の女」「桜の森の満開の下」
酉島先生の作品「皆勤の徒」「彗星狩り」「宿借りの星」「幻視百景」「金星の蟲」「旅書簡集 ゆきあって しあさって」

近藤先生は以前から小説を漫画化することにあたって、読者一人一人のイメージを漫画化の絵で規定してしまうことに悩みを抱えておられ、最初に小説を読んでから漫画を読んで欲しいと繰り返しおっしゃっています。酉島先生は自分の作品の中で「ここは文章で想像して欲しい」「ここは絵で表現したい」と、場合のによって表現方法を変えることが出来るという希有な才能の持ち主です。そういう方とご一緒なので「絵と文章」の関係について興味深いお話がうかがえます。

具体的に近藤先生の作品の中で「これは絵があって助かった」と酉島先生が指摘される場面もあります。酉島先生ご自身が「絵があって助かった」と言われることもあるようです。とにかく難解なのです…

動画の中では、近藤先生の作品の中の絵が多数登場します。酉島先生も近藤先生の作品についてよくご存じで、たくさん質問してくださってます。話題にあがった場面のキャプチャーが多数入り込んでいます。他の方の対談ではこういうことはないのではと推察します。

小説を漫画化することの難しさ、おもしろさについて。文章の情報量が少なすぎる場合、絵にするのは難しいけれど何とか絵にしてしまうこと。漫画化しにくい作品としやすい作品の話などもされています。

それぞれの先生の作品について苦労されたところ、意図していたところなどたくさんお話されているので、ファンは是非視聴した方がいいと思います。近藤先生が「戦争と一人の女」を描くときに大量の資料を探して描いたにもかかわらず「押し付けがましさが全くない」と酉島先生がおっしゃると「ここまでやって調べたのよ、というのはなるべく出さないようにした」と近藤先生が返していて、近藤先生の作品はそうなんです。一貫して押しつけがましくない!と思いました。
最後に、お互いの作品の共通点についてもお話されています。お二人の作品に共通点があるとはちょっと意外でした。

あまり具体的に内容を書くことは有料コンテンツなのではばかられますが、以下に動画の中でのインデックスのような扱いのテロップを並べておきます。なんとなく雰囲気が伝わればと。

漫画「夢十夜」
小説を漫画化することへの逡巡
小説を漫画化すること
文章と絵を両方かく酉島伝法
酉島伝法「旅書簡集 ゆきあって しあさって」
世界を最適な表現で体感してもえらう
絵と文章の組み合わせ
挿絵から描いた「皆勤の徒」
漢字は挿絵、さらに装飾したのが造語
造語を英訳
H.R.ギーガー 映画「エイリアン」のクリーチャーデザイナー
離れても離れられないもの
太陽が歩いてくる
挿絵を入れるか入れないか
漫画化の難しさ
津原泰水原作「五色の舟」
澁澤龍彦原作 近藤ようこ漫画「高丘親王航海記」
コマ撮りアニメを想像しながらかいた作品
酉島伝法「宿借りの星」
酉島伝法「幻視百景」
絵と文章が混ざったイメージを作りたい
酉島小説は読むのに時間がかかる
「高丘親王航海記」を描いているとき
近藤ようこ「ルームメイツ」
近藤ようこが描くお年寄りが好き
小説にも漫画化できるものとそうでないものがある
坂口安吾原作 近藤ようこ漫画「戦争と一人の女」
小説を漫画化するきっかけ
坂口安吾作品は読みにくい
坂口安吾「桜の杜の満開の下」
リアルに恐ろしく描きたくない
グロテスクなものはグロテスクではない
人間を描いていきたい
「金星の蟲」と「知らない顔」の類似点
「金星の蟲」と「皆勤の徒」
人間以外の静物がどう世界を捉えて生きているのかを知りたい

最初に1回通しで見たのですが、さらっと流れてしまって頭の中に入らなくて。特に酉島先生の方は私が作品や内容をよく存じ上げないので。それで全文書き起こししてみました。もちろん有料コンテンツなので公開はしません。やっぱり配信は便利だなぁと思いましたが、1週間しかないので、焦りつつちょっとずつやってみました。いろいろ検索してみたりして作品について、登場人物について調べることができました。宇野亜喜良先生の方の「五色の舟」を読んでみたりもしましたし、酉島先生の作品について知ることもできたし、もちろん近藤先生の作品にまつわるお話も聴くことが出来て有意義な動画でした。
2024.04.05. 23:12 | イベントレポート

2023年11月30日

コミックビーム28周年展レポート

2023年11月10日から開催されている「コミックビーム28周年展」に近藤ようこ先生も参加されていると聞き、会場であるジュンク堂書店池袋本店に11月30日に行ってきました。

会期:2023年11月10日(金)〜12月13日(水)
会場:東京 ジュンク堂書店 池袋本店 9F

11月10日〜24日はB1F・コミックフロアにて一部が展開され、11月25日から9Fギャラリーにて全グッズの販売・全展示が開始されると聞いて、25日以降に行かないと思いまして。
14人の作家が参加されている複製原画展とグッズ販売のイベントなんですが、28周年ってずいぶんとまた中途半端な‥。

近藤先生の複製原画は「高丘親王航海記」からモノクロ1枚とカラー1枚。
また、本の選書が3冊。POPは直筆です。
「死者の書 身毒丸」折口信夫
「スローターハウス5」カート・ヴォネガット
「カムイ外伝」白土三平
それと、高妍さんの「緑の歌」のPOPをカラーイラスト付きで描かれていました。

グッズは残念ながらマグカップ(全作家集合1種)が売り切れていましたが、あとはありました。ミニ色紙、アクリルキーホルダー、クリアファイルと複製原画を買ってきました。高級複製原画はカラー原画です。『コミックビーム』2019年4月号の表紙画です。

グッズ
・ミニ色紙 550円
・A4クリアファイル 660円
・ダイカットステッカー(2枚セット) 605円
・アクリルキーホルダー 770円
・アクリルブロック 770円
・複製原稿 1,100円
・高級複製原画(※完全受注生産)27,500円
・マグカップ 2,200円

この後、那覇、福岡、梅田、札幌と回るそうです。詳しい日程は下記に。
コミックビーム28周年展





















2023.11.30. 23:37 | イベントレポート

2022年11月09日

鎌倉文学館特別展「没後35年 澁澤龍彥 高丘親王航海記」レポート

鎌倉文学館で開催されている特別展「没後35年 澁澤龍彥 高丘親王航海記」に行ってきました。近藤ようこ先生の「高丘親王航海記」の原画も展示されていると聞いていたので、早く行きたかったのですが、ようやく行って来られました。

会期:2022年10月2日(日)〜12月23日(金)
会場:鎌倉文学館(〒248-0016 神奈川県鎌倉市長谷1-5-3)

2階の特別展示室A→第1部「高丘親王航海記」が生まれるまで/第2部 澁澤龍彥「高丘親王航海記」への航路
1階の特別展示室@→第3部「高丘親王航海記」の世界
の3部構成なのですが、ちょっとわかりづらい…1部屋1部構成かと一瞬勘違いしてしまいました。

鎌倉文学館の入口は2Fにあるので2Fの特別展示室Aから見ることになります。「高丘親王航海記」の原稿、創作メモ、自筆の地図が展示されていました。その作品の源泉となった少年の頃読んでいた海洋冒険小説、出来事(カフスボタンを飲み込んだ話)、その後読んだ東南アジア史、東洋史、高丘親王の伝記など参考にした大量の本等についても触れられています。

1Fの特別展示室@「第3部「高丘親王航海記」の世界」に近藤ようこ先生の原画が登場します。澁澤龍彥の原稿の横に少し展示があるのかな…くらいの予想で行ったのですが、原作の原稿と並べて全面的に原画が展開されていて、全部で26枚も展示がありました。展示されているのは単行本で言うと下記のページです。

第1巻:儒艮II p44〜45/儒艮IV p94/儒艮V p119〜120/蘭房II p175
第2巻:蘭房III p34〜35/獏園I p48/獏園III p96、p120
第3巻:密人IV p12、p35、p38/鏡湖II p85、p87/鏡湖III p99/鏡湖IV p129/真珠I p171
第4巻:真珠IV p62〜63/頻伽III p138/頻伽IV p155、p162、p164〜165

ストーリーに沿って展示がされていて、原稿と原画が並んでいます。とても素晴らしい試みです。私は先生の絵の方を重点的に見てしまいましたが、ちゃんと原稿も見ましたよ。なんとも言えずなまめかしい薬子の顔、かわいい儒艮などたくさん原画で見られて楽しかったです。

図録を見ればどの絵が展示されていたのかわかります。図録は通信販売されています
880円+送料300円。注文書をダウンロードしてFAXか郵送だそうです。
展示の詳細が入っているので、遠方やご都合がつかない方は是非。

マンガの原画展ではなく、あくまでも文学展に組み込まれて原画が展示されているという前提でいくと仕方がないのですが、以下の2点については不満でした。
1.原画の位置が低い場所がある…座り込まないと見えないケースもありました。
2.原画の前に棚があって原画が遠くなる
文章の原稿ならまだ読めるとは思いますが、マンガ原稿は細部が命なので。

また、これは原画展ではないし、原画展は以前行われているので仕方がないのですが、この作品、見開きで素晴らしい絵がたくさんあるのです。原画展として見るなら他にももっと見たい絵があったなぁ…というのが正直なところです。これも仕方がないです。今回ピックアップされた原画はストーリーの中では重要なものだと思います。

見学日は11月8日です。今年はバラの成長が早く、例年より早めに散ってしまったようでしたが、お天気がよく気持ちの良い日でした。鎌倉文学館は2023年4月から4年間の休館に入ります。その前に行っておいてよかったと思いました。

追記
鎌倉文学館ではこの展示に合わせて近藤ようこ先生の講座動画をアップしました。2023年1月31日までの視聴となります。
文学講座「小説を漫画に描く」近藤ようこ さん(鎌倉文学館公式YouTubeチャンネル)

鎌倉文学館


没後35年 澁澤龍彥 高丘親王航海記パンフ


西洋の芸術文化や歴史への深い造詣から、独創的なエッセイや小説を書いた澁澤龍彦。彼の没後35年を記念し、唯一の長編小説で遺作となった「高丘親王航海記」に焦点を当てます。平安時代に生きた高丘親王の天竺への幻想的な旅を書いた作品と澁澤龍彦の魅力について、草稿や創作メモなどの資料と、漫画家の近藤ようこさんがコミカライズし高く評価された「高丘親王航海記」の原画をとおし紹介します。

〈特別協力〉澁澤龍子、近藤ようこ(漫画家)
〈寄  稿〉堀江敏幸(作家)
2022.11.09. 23:49 | イベントレポート

2021年10月03日

近藤ようこ先生の個展「南方綺譚」レポート

南方綺譚2021年10月2日〜17日に近藤ようこ先生の個展「南方綺譚」が東京の青山にあるビリケンギャラリーで開催されています。9月10日、『コミックビーム』2021年10月号で「高丘親王航海記」が完結しました。これを記念してのものです。
また、10月12日には待望の4巻が刊行されますが、いち早くギャラリーで販売されています。しかもサイン付き。

「更紗」や「テラス」に白人の女性が登場します。南蛮時代の女性の衣装は時々描かれているように思えます。「午睡」の王子様(?)の衣装など特徴的です。また、お着物にピンク〜赤みがかった色が多いのですが、お好きな色だそうです。

モノクロの原画はちょっと変わったおもしろいページをピックアップされています。原作ではピンと来なかった場面なので、鏡のページに私は注目しました。この時代の中国の鏡はどうなっているのかわからないので、ネットを駆使して探し出して描かれています。探すのは大変でも、中国はまだ古くからのものが残っていて、他の国の過去の時代を描くより調べやすいとのこと。

しかしこのコミックビームの表紙を出してしまうとは…本当に先生は画集を出すおつもりがないのだなぁと。出してください…。

ビリケンギャラリー●モノクロ 原稿 15枚

○上段右から
「高丘親王航海記III」p125〜127
「高丘親王航海記IV」p74〜75
「高丘親王航海記III」p51、p50

○下段右から
「高丘親王航海記IV」p40〜42、p96〜98、p182〜183

●カラー 大 10枚 左から順に
「廃園」水彩絵具、墨、パステル
「更紗」水彩絵具、墨、色えんぴつ
「虎の女」アクリル絵具、墨
「陳家蘭」アクリル絵具、墨
「ラフレシア」(コミックビーム表紙画)水彩絵具、墨、筆ペン
「午睡」水彩絵具、墨、色えんぴつ
「スイレン」アクリル絵具、墨
「高丘親王航海記」(コミックビーム表紙画)
「テラス」水彩絵具、墨、パステル
「蓮」水彩絵具、墨、パステル

ビリケンギャラリー●カラー 中小 8枚 左から順に
小作品@〔キツネ〕
「紙風船」一筆箋原画 水彩絵具、墨
小作品A〔ネコ〕
小作品B〔少女とネコ〕
小作品C〔少女と羽根〕
小作品D〔人魚〕
小作品E
小作品F〔虎の女〕


日時:2021年10月2日(土)〜17日(日)12:00〜19:00
(定休日:10月4日、5日、11日、16日)
場所:ビリケンギャラリー
〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101
TEL:O3-3400-2214 FAX:03-3400-2478
地下鉄表参道駅B1出口より7分
ホームベージ


2021.10.03. 14:47 | イベントレポート

2020年09月05日

近藤ようこ先生の「高丘親王航海記原画展」レポート

高丘親王航海記原画展2020年9月5日から近藤ようこ先生の個展「高丘親王航海記原画展」が始まりましたので、青山ビリケンギャラリーまで行ってまいりました。「高丘親王航海記」の原画と、それ以外描き下ろしの原画が展示されています。初めて見る絵と単行本や雑誌の表紙を飾ったカラー原画がありました。墨の線がちょっと今までと違う感じがしますが、近藤先生らしい柔らかさが感じられました。

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出品されている原画は以下の通りです。
●高丘親王航海記より
カラー原画『コミックビーム』2019年4月号表紙
カラー原画 4枚 序
モノクロ原画 10枚
・儒艮III(単行本1巻 p64〜65)
・儒艮V(単行本1巻 p112〜113)
・蘭房II(単行本1巻 p178〜179)
・密人I(単行本2巻 p134〜135)
・密人III(単行本2巻 p194〜195)

●カラー原画 13枚(※左から順に)
「ちごいま」(「室町時代の女装少年×姫」カバー) 320x220 水彩絵の具・墨
「楓」320x220 アクリル絵の具・水性インク
「蟇の血」(コミックビーム2017年9月号表紙) 270x225 水彩絵具 墨
「葡萄」370x255 アクリル絵の具 水性インク
「襤褸」320x220 水彩絵の具 墨
「唐草」320x220 アクリル絵の具 パステル 水彩インク
「薊」370x255 アクリル絵の具 水性インク
「くわずいも」320x220 アクリル絵の具 水性インク
「小さ男と姫君」(「猫の草子」カバー) 160x210 水彩絵の具・墨
「ラフレシア」365x320 アクリル絵の具 水性インク
「百合」小さな絵
「花」小さな絵
「芥子」小さな絵

※「高丘親王航海記」のカバー色校(井上則人)の展示。

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9月11日から一般販売が開始される「高丘親王航海記」1巻2巻のサイン本が買えます。それ以外の御著書にもサインされていらっしゃいました。これだけ近藤先生の本が揃うと壮観です。

2020090505.jpg「高丘親王航海記原画展」
2020年9月5日(土)〜21日(月)
12:00〜19:00 月火休み(21日休日営業)
ビリケンギャラリー

2020.09.05. 23:15 | イベントレポート

2017年09月28日

森下文化センターの講座「怪奇・恐怖マンガの世界」のレポート

20170917.jpg2017年9月17日(日)、森下文化センターで開かれた講座「怪奇・恐怖マンガの世界」第4回 近藤ようこ先生の回を聞いてきました。大型の台風が近づいていましたが、無事開催されました。
メモと記憶だけで書いているので、勘違いや思い込みで間違いがあるかもしれません。お気づきの際にこちらからご連絡いただければ、速やかに修正します。どうぞよろしくお願いいたします。

講座「怪奇・恐怖マンガの世界」第4回 日本の中世を現代の目で描く
日時:2017年9月17日(日) 14:00〜15:30
会場:江東区森下文化センター 2F 多目的ホール
講師:近藤ようこ先生
企画・コーディネート:綿引勝美(元秋田書店編集者)

講座「怪奇・恐怖マンガの世界」第4回。怪奇・幻想マンガのルーツは江戸時代や中世の伝承文学です。今回は「日本の中世を現代の目で描く」と題し、近藤ようこ先生が講師を務められます。コーディネーターの綿引さんと近藤先生は國學院大学の漫画研究会の先輩・後輩だそうです。國學院大学の漫画研究会は嵐山光三郎氏が設立した歴史ある研究会とのことでした。


1.現在、近藤先生は田中貢太郎の「蟇の血」を連載中
田中貢太郎は戦前に人気のあった作家で、怪談をを書いたり、怪談を紹介したりしています。とても多作な人です。10年くらい前に初めて読んで、とてもおもしろいのでマンガにしたいと思ったのですが、ようやく発表できました。

2.高校時代
新潟中央高校という女子校にいました。その学校には漫画研究会がなかったので、高橋留美子さんらと一緒に設立しました。その頃は24年組がブームだったので、夢中になって読んでいました。
(この辺りで『少年チャンピオン』が出てきました。確かに当時はすごい勢いで、山上たつひこ「がきデカ」の話などが出てました。「光る風」が好きだったので驚いた、というお話をされていました。何故そんな話になっているのかというと、コーディネーターの方が秋田書店の編集者だったからなんでしょうね。)

3.大学進学
高校卒業後の進路を考えたとき、進学して自分の好きな勉強がしたいと思いました。私は白土三平先生の忍者マンガが好きで、その物語に描かれている「何か」が学びたくて、でもその「何か」がどんな名前のわからなくて、いろいろ調べていたら、民俗学というものがあることを知りました。歴史学者の上田正昭先生の「日本神話」(1970)によると、柳田学は幸福の民俗学、折口学は別れや死をあえて拾い上げていた不幸の民俗学であるという趣旨の言葉を読みました。そちらの方が自分にとってはいいなと思って、折口学を学ぶことを決めました。

4.大学時代
大学3年生の時には卒論のテーマを決めなくてはなりません。その頃、網野善彦の「無縁・公界・楽」(1978)が出て、中世史の新しいブームがやってきました。その本は、白土マンガに描かれているような農民以外の職人やこつじき・芸能民など、正史に出てこない人の人々の歴史を取り上げたものでした。

私は卒論のテーマに「説経節」をとりあげました。説教は中世末期から近世初期にかけて成立した口承文芸です。民俗学を卒論のテーマにするのはよいけれど、文学部なので文芸を中心にしなさいと言われたので。
説教節には「五説経」という代表的なものがありますが、「苅萱」「愛護若」「信田妻」「梅若」「山椒大夫」と言われています。

5.説教節「しんとく丸」
「妖霊星―身毒丸の物語」(1992〜93)
「しんとく丸」は謡曲「弱法師(よろぼし)」と同根の物語です。「しんとく丸」に「身毒丸」の字を、「弱法師」に「妖霊星」の字をあてたのは、折口先生に拠るものです。


6.民俗学とマンガ
「カムイ外伝」の「くノ一」のエピソードが大好きでした。抜け忍カムイが木こり集団によそ者として入り込んでいるお話で、木こりが歌う歌がいいんです(※アニメでも再現されています)。網野善彦「無縁・公界・楽」の世界です。

7.懐かしく思い出す「白土マンガ」
大人になって柳田国男を読み、折口信夫を読み、宮本常一を読んで、懐かしく思い出すのは、こういう農民以外の世界を描いた作品でした。

8.楽しく描いた「水鏡綺譚」
「水鏡綺譚」の連載は『ASUKA』という少女マンガ誌だったので、少女向けを意識したのところに少し無理があったようです。残念ながら打ち切りになってしまいましたが(後に完結編を描いて単行本にまとまりました)。「ころころとかわいくて、素朴で、エロチック」な作品にしようと思ったのですが、これは自分が子どもの頃に好きだった白土三平さんの少年マンガのテイストです。ネタを探すのは大変でしたが、原点そのものを使うわけではなくて、現代風にアレンジしたりもしました。


9.「今昔物語」とマンガ
「鬼にもらった女」に収録されている「残された女」(2004)は「苅萱」、「打つ女」(2004)は「今昔物語」、「鬼にもらった女」(2005)は「長谷雄卿草紙(はせおぞうし)」が元ネタです。古典の物語のパターンは定形があるので心理描写などもアレンジしやすいです。



10.「今昔物語」と白土三平
白土マンガに「今昔物語」を取り上げた「鬼」という作品があります。
・兄弟が鬼を退治する話
・恋人を裏切った男の話
・鬼の出る堂にいった三人の男の話
(※この辺ちょっと聞き逃してしまいました。)


11.口承文芸「説教節」のマンガ化「小栗判官」
説教 小栗判官「小栗判官」は説教節の中でも一番長くて、いろいろな要素がたくさん入っていておもしろい作品です。いつかマンガに出来たらと思っていました。描き下ろしで白泉社さんから出してもらって(1990年)、文庫(筑摩文庫)にもなりました。最近も角川書店から出してもらいました。
岐阜県大垣市や神奈川県藤沢市のほか各地に残っている「小栗判官・照手姫」の伝説ですが、ゆかりのある地域の人が集まって小栗サミットなども開かれました。私の「小栗判官」は岩佐又兵衛の「小栗」という絵巻物を参考にしました。絵巻物では小栗は烏帽子をつけた公家の姿をしています。小栗は元は公家ですが流罪の末、武士の頭領になりました。ですから、公家の姿のままではマンガにするとき描きにくいので、武士の姿にしました。


12.中世の恋愛模様
猫の草子「猫の草子」に収録されている「雨夜の姫」(1988)。月夜の姫と雨夜の姫という娘がいて、雨夜の姫はいわゆる現代的な美人で、月夜の姫は下ぶくれの、樹下美人図のような顔をしています。当時の美意識では月夜の方が美人だったのです。「南蛮貿易」が始まっていて、海外に出れば美意識が逆転して美人として見られます(「南蛮船」)。


13.中世の人間模様
花散る里(綿引)「花散る里」(最初の方)のあとがきに「時代物でわざわざ近代的な人間像を描く必要はない。神や仏に翻弄され、運命を縮めるという、人間が何百年もやってきたことを私は描きたいだけだ。」とありますね。
(近藤先生)昔の人は神や仏や運命といったものに翻弄されて生きています。そういうふうに物語は描かれていて、そのやり方でマンガを描くと「キャラが立っていない」と言われてしまいます。今のマンガはキャラクターの魅力で進めていくのが主流なので、私のマンガはちょっと向いていないんですね。


14.「逢魔が橋」
逢魔が橋小学館で連載した作品です。
「二河白道図」(にがびゃくどうず)は地獄と極楽の間にかかる白い橋を描いたものです。
橋はどこにも属さず、ひとつの世界から別の世界に渡す物だから、そういう場所を設定すればいろいろな物語が描けるかなと思いました。狂言回しとして橋守を設定しました。


15.「桜の森の満開の下」
桜の森の満開の下夜長姫と耳男"
坂口安吾の「夜長姫と耳男」と「桜の森の満開の下」は小学館のもうなくなってしまったインターネットのサイトで連載したものです。当時、江戸ものが流行っていたので、そういうものを描いて欲しいと言われて、それは私は得意な分野ではないので、他の方にお願いして下さい、と申し上げました。すると当時の小学館の常務さんが、いやあなたに描いて欲しいのですと言われまして、好きなものを描かせていただけるのなら、とお引き受けしました。この二冊は近々岩波書店から岩波現代文庫で出されます。

「夜長姫と耳男」は耳男は物をつくる人で、その喜びや悲しみを語っているので、私も物をつくる人間なので描きやすかったのですが、「桜の森の満開の下」は、もっと心理的な内容でわかりにくい作品でした。でも、安吾の中で一番人気があって、しかもまとまっている作品です。主人公の山賊はずっと山の中で暮らしていたので、自然と自分の区別がついていない人間でした。それが8人目の嫁に出会うことで、世界と自分は違うのだということがわかってしまった人間の悲劇です。安吾のこの作品における「桜」のイメージは空襲の後の上野公園に死体が並べられていて、その上に桜が散っているのを見たときのものだそうです。


16.「戦争と一人の女」
戦争と一人の女安吾は「女を書けない」人なんです。この小説は女の一人称で書かれているのですが、ここに出てくるのは実は「何も語ってない女」なんです。ですから、マンガにするときに工夫が必要でした。


17.「死者の書」
死者の書「死者の書」には川本喜八郎さんの人形アニメーション作品もありますが、私の作品と解釈が同じですね。滋賀津彦は死んでいるのですが、郎女を自分が好きになった耳面刀自と思い込んで蘇って夜這いにきます。それを郎女がとても怖がっています。でも違うところもあって、アニメーションは死者と俤人(おもかげびと)とを同じ造形にしているのですが、私は俤人と滋賀津彦は違う人だと思っているので、そこは違います。
「死者の書」は折口民俗学を前提として知っている人に向けて書かれているので、知らない人がいきなり読むと難しい作品です。私のマンガはそういう人が原作を読む助けになって欲しいと思っています。


18.「蟇の血」
蟇の血今、2話目なのですが、ちょっとまだダラダラした感じです。この後から変な世界になっていきます。



20170917-2.jpg講座は有料なだけあって、資料やスライドがきちんと用意されていました。近藤先生の作品が次々と現れ、展開が早くてついていけなかったので、それだけ充実してみっちりした内容だったと思います。
講演終了後、近藤先生のサイン会が開かれました。
2017.09.28. 17:36 | イベントレポート

2017年03月12日

個展「物語る絵2」再訪しました。

近藤ようこ個展「物語る絵2」ビリケンギャラリーで開かれている近藤ようこ先生の個展「物語る絵2」ですが追加された絵があるというので、再訪しました。2017年3月12日、最終日でした。小説や物語を糸口とした描き下ろし絵画作品が15点、「夢十夜」の原画18枚が展示されていました。


左から(★は後期に追加された絵)
「少女地獄・火星の女1」夢野久作『少女地獄』から(水彩絵具・アクリル絵具)
「人魚姫」(墨)★
「少女地獄・火星の女2」(水彩絵具・アクリル絵具)
「日本霊異記」吉祥天が男の願望に応える(水彩絵具)
「蝉丸」(水彩絵具)
「じゃがたら文」17世紀初頭、国外追放された混血児のイメージ(水彩絵具)★
「天稚彦」御伽草子『あめわかひこ』から(水彩絵具)★
「夜」『夢十夜』から(水彩絵具)★
「蟇の血」田中貢太郎『蟇の血』から(水彩絵具)
「海人(珠取)」謡曲『海人』から(水彩絵具)
「骨の肉・牡蠣殻と伊勢海老」河野多恵子(鉛筆&色鉛筆)★
「夢十夜2」夏目漱石『夢十夜』から(パステル 水彩絵具)
「夢十夜1」夏目漱石『夢十夜』から。ポストカード(水彩絵具)
「桜」(水彩絵具)
「百合」(水彩絵具)

今回、さまざまな手法にチャレンジされたことがわかりました。いつもは水彩ですが、墨画、パステル画、鉛筆&色鉛筆画といった手法の作品がありました。

ビリケンギャラリーでの個展も3回目。できればそろそろ画集が欲しいところです。いま、画集を売るのは難しい時代で、滅多につくられませんが、是非お願いします。

原画は同じです(個展「物語る絵2」に行ってきました
2017.03.12. 22:18 | イベントレポート

2017年02月20日

個展「物語る絵2」に行ってきました

近藤ようこ個展「物語る絵2」2017年2月19日、青山ビリケンギャラリーで開かれている近藤先生の個展「物語る絵2」に行ってきました。小説や物語を糸口とした描き下ろし絵画作品が10点、「夢十夜」の原画18枚が展示されていました。


会期:2017年2月18日(土)〜3月12日(日)
開催時間:12:00〜19:00(毎週月曜日定休)
会場:ビリケンギャラリー(東京都港区南青山5-17-6-101 TEL:03-3400-2214)

●絵画作品10点
1.「夢十夜1」〜夏目漱石『夢十夜』から。ポストカード(左上の絵)第十夜の女
2.「少女地獄・火星の女1」〜夢野久作「『少女地獄』から
3.「少女地獄・火星の女2」〜 〃
4.「蝉丸」〜謡曲『蝉丸』から
5.「夢十夜2」〜夏目漱石『夢十夜』から
6.「日本霊異記」吉祥天が男の願望に応える場面
7.「蟇の血」〜田中貢太郎『蟇の血』から
8.「海人(珠取)」〜謡曲『海人』から
9.「百合」
10.「桜」

●原画16枚
1. 「第一夜」p6
2. 「第一夜」p7
3. 「第一夜」p8
4. 「第三夜」p29
5. 「第三夜」p30
6. 「第三夜」p31
7. 「第三夜」p32
8. 「第三夜」p33
9. 「第五夜」p64
10. 「第五夜」p65
11. 「第五夜」p66
12. 「第六夜」p78
13. 「第六夜」p79
14. 「第六夜」p80
15. 「第十夜」p142
16. 「第十夜」p143

絵画作品から。「夢十夜2」は「第一夜」の女性でしょうか?他の絵が紙にペンと水彩で色をつけられているのですが、これだけカンバスのような地で、雰囲気が違います。「少女地獄・火星の女1」の方の顔が外されている表情が怖いです。「海人」の小刀を加えた女性の厳しい表情も目を引きました。「蟇(がま)の血」は前回の「物語る絵」でも取り上げられていましたね。9と10は本を買うといただけるポストカードのイラストです。

原画の方ですが、「第一夜」の穴の中の女性の絵を見ることが出来ました。「第六夜」の彫刻の部分のみ墨で描かれていて、効果的にこの太い線を使われているのだなということがよくわかります。

3月には絵が追加されるそうです。その頃、是非また伺いたいと思います。

本日12時より漫画家 近藤ようこ個展 「物語る絵 2 」開催いたします!!!(billiken-note)


(ビリケンギャラリーに行くときはいつも近くのNicolai Bergmannに寄っていきます。)
2017.02.20. 02:02 | イベントレポート

2016年09月26日

ミュージアムトーク「國學院の学び、『死者の書』」レポート

2016年9月24日(土)、國學院大學博物館で開催されている「折口信夫と『死者の書』―生誕130年記念 特集展示」を観てきました。また、ミュージアムトーク「國學院の学び、『死者の書』」を聴いてきました。

近藤先生の「死者の書」の原画ですが、9月3日〜22日を前期、9月23日〜10月10日を後期として2回に分けて各20枚ずつ展示されます。23日からは後期なので、下巻から20枚です。

  • p8〜11の4ページ
  • p30〜31の2ページ
  • p71〜73の3ページ
  • p144の1ページ
  • p177〜179の3ページ
  • p180〜181の2ページ
  • p190〜194の5ページ


12時30分から博物館のホールではミュージアムトークが始まりました。今回は民俗学者で同大文学部教授の小川直之氏との対談形式になります。前回と異なり、この日はシックな洋装でした。お着物も素敵ですが、近藤先生は洋服姿も素敵です。

最初に歌人・釈迢空としても知られる折口信夫の肉声が残っていて、それを聞かせてもらいました。それから対談に入りました。


小川先生:近藤さんはどんな学生生活を送っていたのですか?

近藤先生:今はとてもきれいな校舎になりましたが、自分がいたころはもっと古くて狭い校舎でした。

高校生のとき、折口民俗学に興味があったので入学を考えたのですが、世間では右翼のイメージがあったので、怖かった。それで高校三年生の夏休みに見学にきました。当時の大学はどこでもそうでしたが、学生運動の立て看板がありました。右翼の学校かと思っていたら左翼もいる、バランスのとれた自由な大学なのかなと思い、安心しました。

今思うと良い大学だったと思います。卒業してしまうと、もっと勉強出来たのでは?と思ってしまいます。渋谷からすぐという街中にあるのに、静かでのんびりとした環境でした。

高校生のときに勉強したいけれど、どのジャンルかわかりませんでした。古代史なのかな?と思ったりもしました。
歴史学者の上田正昭先生の「日本神話」を読んで、民俗学というものがあることを知りました。そこでは「柳田学は幸福の民俗学、折口学は不幸の民俗学である」という趣旨の言葉を読みました。折口学は柳田学が拾わなかった「死」や「わかれ」「性」といったものを扱っているという意味ですが、それなら私は折口学だと思いました。ちょうど「死者の書」が中公文庫から出たところでしたので、早速買って読んでみて「自分がやりたかったのは、これだ」と思ったのです。



小川先生:大学で勉強したことは、今でも役に立ってますか?

近藤先生:漫画家の仕事の役に立っています。大学で勉強する過程で知った「小栗判官」を漫画化したりしました。

小川先生:デビューは大学時代ですよね。

近藤先生:大学生時代も漫研(漫画研究会)に入っていて、デビューが大学4年生でした。卒業ぎりぎりの単位しかとらず、4年生の時は授業は週に3時間だけで、あとは卒論を書くだけでした。ですから、ずっと図書館にいて、古い論文を探すのがとても楽しかったのです。

卒業後、漫画を書くときに調べ物をすることがたくさんあります。そのときに調べ物のやり方などで、大学時代に学んだことは役に立ちました。

また、4年生の時に徳江(元正)先生の「中世文学演習」をとりまして、この授業で学んだ「絵解き」の勉強は半分趣味で、半分仕事で続いています。



小川先生:「死者の書」を読んで印象に残ったところを三つあげてください。

近藤先生:全て好きなので、三つというのは難しいですが…。

1. 初めて「死者の書」を読んだとき、私の知っている言葉がたくさん出てくると思いました。これまでは古事記などでしかこういう言葉を使うものは読んだことがなかったので。

2. 話がぼんやりとしかわからない、でも何故かおもしろい、と思いました。

3. 大伴家持がおもしろい人物だと思いました。

〔すみません、ここからメモが判読できなくなっています。話がかなり抜けています〕



最初は「死者の書」を「しょ」ではなく「ふみ」と読んでいました。たぶん大学でそう習ったからだと思います。

「死者の書」は俤びとのイメージがおもしろいのですが、ほかに、郎女が夢の中で珊瑚になったシーンがおもしろいです。これは折口が海を出したかったのではないかと思います。
「ずんずんと、さがって行く。水底みなぞこに水漬みづく白玉なる郎女の身は、やがて又、一幹ひともとの白い珊瑚さんごの樹である。脚を根、手を枝とした水底の木。頭に生い靡なびくのは、玉藻であった。玉藻が、深海のうねりのままに、揺れて居る。やがて、水底にさし入る月の光り――。ほっと息をついた。」




小川先生:「死者の書」の次に取り上げて漫画化したい作品はなんですか?

近藤先生:それはありません。「しんとくまる」(「身毒丸」という漢字が一番好きです)もすでに出していますし。折口信夫は詩集を3冊(「古代感愛集」「近代悲傷集」「現代襤褸集」)を出しているので、その詩に挿絵をつけるというのをやってみたいのですが、そんな仕事は多分来ないと思います。



最後に折口信夫が描いたスケッチが公開されました。落書きやフィールドワーク中のスケッチまで、さまざまなイラストがありましたが、まさに「ポンチ絵」と呼べるような、ユーモアあふれる絵もありました。

すみません。相当飛んでいますので中身の薄いレポートになっていますが、本当はもっと中身の濃いイベントでした。

集展示生誕130年記念 「折口信夫と『死者の書』」ミュージアムトークIII
2016.09.26. 23:27 | イベントレポート