2024年04月05日
日本近代文学館「2023年の声のライブラリー」近藤ようこ×酉島伝法
2024年3月30日より配信が開始された、日本近代文学館「2023年の声のライブラリー」に近藤ようこ先生と酉島伝法先生の対談が収録されています。有料1,200円で1週間の視聴期限となっています。vimeoの公式アプリの「オフラインリスト」に追加してダウンロードしても、期限内だけの視聴です。
2023年の声のライブラリー 動画配信開始
日本近代文学館「2023年の声のライブラリー」
「声のライブラリー」は日本近代文学館が1995年から開催している文学者の自作朗読会・対談のイベントです。年4回開かれていましたが、コロナ禍になり、2020年より無観客で行ったものを配信するようになりました。4名の文学者が今一番会いたい文学者をそれぞれ招き、自作朗読と対談を行った記録映像集になっています。
これに近藤ようこ先生が指名されましたが、近藤先生が「わたしは文学者ではないので」と戸惑われたのはよくわかります。それで、小説家で絵も描かかれる酉島伝法先生をお招きになられた。酉島先生は小説家ですが、もともとデザイナー/イラストレーターなので、絵の方こそ先にプロだった方です。日本SF大賞を2度受賞された気鋭のSF作家です。
今回のものは2023年10月31日・11月1日、無観客にて日本近代文学館講堂にて収録されたものだそうです。全体で1時間48分となっています。「各回、それぞれの講師による30分程度の朗読の後、約1時間の対談」とありましたが、近藤先生は作品が漫画なので「夢十夜」の後書きを読まれました。なので朗読が20分くらいでしょうか。残り1時間30分丸々対談です。
○話題に出た作品
近藤先生の作品「夢十夜」「高丘親王航海記」「五色の舟」「ルームメイツ」「戦争と一人の女」「桜の森の満開の下」
酉島先生の作品「皆勤の徒」「彗星狩り」「宿借りの星」「幻視百景」「金星の蟲」「旅書簡集 ゆきあって しあさって」
近藤先生は以前から小説を漫画化することにあたって、読者一人一人のイメージを漫画化の絵で規定してしまうことに悩みを抱えておられ、最初に小説を読んでから漫画を読んで欲しいと繰り返しおっしゃっています。酉島先生は自分の作品の中で「ここは文章で想像して欲しい」「ここは絵で表現したい」と、場合のによって表現方法を変えることが出来るという希有な才能の持ち主です。そういう方とご一緒なので「絵と文章」の関係について興味深いお話がうかがえます。
具体的に近藤先生の作品の中で「これは絵があって助かった」と酉島先生が指摘される場面もあります。酉島先生ご自身が「絵があって助かった」と言われることもあるようです。とにかく難解なのです…
動画の中では、近藤先生の作品の中の絵が多数登場します。酉島先生も近藤先生の作品についてよくご存じで、たくさん質問してくださってます。話題にあがった場面のキャプチャーが多数入り込んでいます。他の方の対談ではこういうことはないのではと推察します。
小説を漫画化することの難しさ、おもしろさについて。文章の情報量が少なすぎる場合、絵にするのは難しいけれど何とか絵にしてしまうこと。漫画化しにくい作品としやすい作品の話などもされています。
それぞれの先生の作品について苦労されたところ、意図していたところなどたくさんお話されているので、ファンは是非視聴した方がいいと思います。近藤先生が「戦争と一人の女」を描くときに大量の資料を探して描いたにもかかわらず「押し付けがましさが全くない」と酉島先生がおっしゃると「ここまでやって調べたのよ、というのはなるべく出さないようにした」と近藤先生が返していて、近藤先生の作品はそうなんです。一貫して押しつけがましくない!と思いました。
最後に、お互いの作品の共通点についてもお話されています。お二人の作品に共通点があるとはちょっと意外でした。
あまり具体的に内容を書くことは有料コンテンツなのではばかられますが、以下に動画の中でのインデックスのような扱いのテロップを並べておきます。なんとなく雰囲気が伝わればと。
漫画「夢十夜」
小説を漫画化することへの逡巡
小説を漫画化すること
文章と絵を両方かく酉島伝法
酉島伝法「旅書簡集 ゆきあって しあさって」
世界を最適な表現で体感してもえらう
絵と文章の組み合わせ
挿絵から描いた「皆勤の徒」
漢字は挿絵、さらに装飾したのが造語
造語を英訳
H.R.ギーガー 映画「エイリアン」のクリーチャーデザイナー
離れても離れられないもの
太陽が歩いてくる
挿絵を入れるか入れないか
漫画化の難しさ
津原泰水原作「五色の舟」
澁澤龍彦原作 近藤ようこ漫画「高丘親王航海記」
コマ撮りアニメを想像しながらかいた作品
酉島伝法「宿借りの星」
酉島伝法「幻視百景」
絵と文章が混ざったイメージを作りたい
酉島小説は読むのに時間がかかる
「高丘親王航海記」を描いているとき
近藤ようこ「ルームメイツ」
近藤ようこが描くお年寄りが好き
小説にも漫画化できるものとそうでないものがある
坂口安吾原作 近藤ようこ漫画「戦争と一人の女」
小説を漫画化するきっかけ
坂口安吾作品は読みにくい
坂口安吾「桜の杜の満開の下」
リアルに恐ろしく描きたくない
グロテスクなものはグロテスクではない
人間を描いていきたい
「金星の蟲」と「知らない顔」の類似点
「金星の蟲」と「皆勤の徒」
人間以外の静物がどう世界を捉えて生きているのかを知りたい
最初に1回通しで見たのですが、さらっと流れてしまって頭の中に入らなくて。特に酉島先生の方は私が作品や内容をよく存じ上げないので。それで全文書き起こししてみました。もちろん有料コンテンツなので公開はしません。やっぱり配信は便利だなぁと思いましたが、1週間しかないので、焦りつつちょっとずつやってみました。いろいろ検索してみたりして作品について、登場人物について調べることができました。宇野亜喜良先生の方の「五色の舟」を読んでみたりもしましたし、酉島先生の作品について知ることもできたし、もちろん近藤先生の作品にまつわるお話も聴くことが出来て有意義な動画でした。
2024.04.05. 23:12
| イベントレポート
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